大学入試英語長文に必要なスピード(wpm)はどれくらいか。
目次

WPMの意味と誤解
wpmとは
WPMとはwords per minuteの略で1分間に何語英語を理解できるかということを表す数値です。
例えば、3分間で180語理解できたなら60wpm、5分間で1000語理解できたなら200wpmという具合です。
この数字は英語をどれくらいスムーズに理解できるのかということを表す基準として使われ、大学受験用の単語集などにも目標wpmが表示されていることもあります。
wpmに対する誤解
✅音読スピードではない
wpmは音読のスピードではありません。
筆者の教えていた中でも学校でwpmを測ったという生徒がいましたが、その際に音読スピード=wpmとした例がたくさんありました。
もちろん実際の英語の理解の度合いを客観的に知るのは難しいので、そのかわりに音読スピードを利用するというのなら仕方ないかなとも思いますが、
「音読できることと」と「理解できること」は天と地ほど違う、というのは筆者も指導の中で痛いほど思い知らされていますので、
このwpmの測定の仕方は適切だとは到底言えないと私は思います。
✅文の難易度をそろえないとwpmは使えない。
難関大学の入試問題の長文でのwpmと、wpmを測るために用意した簡単な文章でのwpmは当然ですが異なります。
高校生の多くは0wpm?
wpmを測定するためには少なくともよく出てくる英語の形(5文型)、とよく出てくる語彙を身につけている必要があります。
言い換えるなら、世の中にある英語の書籍(英語の勉強用などではない)の半分以上をゆっくりなら単語を調べずに読めるくらいの文法の力が必要だと思います。
だって、文を読んでいて3文も読まないうちに引っかかって「うーん」
となっているのに、スムーズに読めた部分だけを測定対象にして〇〇wpmと結論づけても仕方ないですもんね。
これは筆者の独断と偏見ですが、
少なくとも英検準1級合格レベルはないと読んで理解できる英語の文章が少なすぎてwpmは測定できないのではないかと思っています。
(英語の書籍や新聞を不自由なく読めるには20000語近くの語彙が必要という方もいますので、
英検でいえば1級レベルでも、語彙数としては12000語前後でありwpmを測定できるようなレベルではないという気も本当はしています。)
ですから、多くの英語を勉強している学生の方などはまだ0wpmともいえる状態で、測定できる段階に達していないというのが本当のところだと思います。
難関大学合格=150wpm?
難関大学合格のためには150wpmだとかという記述を時折目にしますが、
大学の入試レベルの文をそのスピードで読むという意味であって、世の中の一般的な英語をそのスピードで読むというのとは話が違います。
しかも筆者の考え、指導時の測定ではその入試の文すら150wpmのスピードで読む必要はないのです。
難関大学入試突破には150wpmが必要?
wpmがその大学の入試長文のみを対象にした場合のスピードだとしても、結論からいうと全く必要ないと思います。
大量の英文が出題される学校、学部ですらその語数は4000語くらいで、時間は90分程度あります。
90分のうち純粋に考えている(文を読んでいない)時間が30分あるとしても
4000語÷60分=約67語
40分はうーんと悩んでいるとしても、
4000語÷50分=80語程度のスピードで十分です。
筆者が指導した経験(実際にwpmをちょくちょく測りながら指導した)ではそのテストに対して60wpmくらいで十分8割の得点は狙える状態でした。
ですので、大学に合格したばかりの人が自分の一般的な英語に対するwpmは150くらいかなと思っている場合は、
いろいろな意味でかなり間違っているのではないかと思います。
もし難関大学入試合格者が150wpm(=ネイティブが自然に話す英語のスピードの最低ライン)もあるのなら、
英語を聞いたり、話したりすることにはあまり大きな支障がないはずなんですね。
ところは現実は、急に話せといわれても黙ってしまうなんて方がほとんどだと思うんです。
もしお読みいただいている方が大学生の方なら、周りの方で誰が英語を話せるのか?と思い起こせばとてもよくわかる話だと思います。
「日本の英語教育はリーディングに偏っていて4技能をバランスよく教えないから英語を話せない、聞けない。」
という話をよく目にしますが、実際は
「偏ってもいるが、リーディングのスピードすらせいぜい70wpm程度(おそらく実際の難関大学生のwpmは外部受験生でも50未満)
と最低ラインの150wpmよりはるかに遅いので英語を聞けず、話せない」
というのが正しい姿なのではないかと筆者は思っています。
英語力向上、長文パート得点アップのために本当に必要なのはスピードではない。

今回wpmについての記事を書いたのは、勉強熱心な方の中にはwpmなどを気にして読むスピードを上げることにフォーカスして、
その結果足踏みしてしまっている方が少なからずいるではないかという思いからです。
読解スピードを上げようとするあまり1文1文の構造をしっかり捕まえるという意識がますます低くなり、
基本文型や基本動詞の語法を勉強すること、反復することから遠ざかっていき、
文章の構成(文ではない)、筆者の言いたいことなどには全く意識がいかなくなり、
結局文、文章が全く頭に入らなくなる。
そうなるとますます英文が理解できないので焦り、もっと学習や読み方がぐちゃぐちゃになる。
こういう方がたくさんいると思うんです。
筆者が指導した、過去問を分析した経験では、
最近の入試長文が長くなっているといってもそれは150wpmや200wpmが求められているのではなく、
①基本の5文型と基本動詞の導く文の形の理解+5500語くらいの語彙をベースに
②長文にSVOCを振りながらそれぞれの単語の文法的な役割を理解しながらゆっくりと読み進める
③英文を高い確率で理解できるようになったら、国語的な文章の構成を理解して、
「言葉ははわかるがその言葉の言いたいことをつかめていない」という状態を脱出する。
③これを500語程度の長文20本+志望校の過去問の長文に対して行う。
以上で十分合格に必要な70wpm程度のスピードは身につきました。
大学合格、英語読解力向上の鍵はスピードよりむしろ①~③を本当にしっかりできるのか否か です!
英語の家庭学習のやり方がこれで見えた!という方が1人でも多く出てくればうれしいです。
(そうは言っても①~③のような内容を質を保って続けるのは本当に難しいもの。わかってはいるけどなかなか一人ではできないよ・・という方はぜひ私へご相談ください。)
この記事のまとめ
大学入試英語長文読解には150wpmが必要などといわれることも多いが、実際はそこまでのスピードは必要ない。
スピードばかり意識して学習するとむしろ英語力向上から遠ざかってしまう。
それよりも基本文型、基本動詞の語法を理解して瞬時にわかる、使えるまで反復して身につける、
文型をはっきりさせながらゆっくりでもよいので確実に文の意味をつかみながら長文を読んでいくことが大事。
そうすると自然に合格に必要な70wpmあたりは上回ることができる!